体験消費時代のマーケティングヒント
21世紀は、ブランドづくりの時代と言われています。「モノ」中心の時代は終わり、「良いモノを作れば売れる」という時代はもはや過ぎ去りました。成熟社会といわれる今日、世の中にはモノがあふれています。モノづくりのレベルはどんどん上がり、品質の良い商品を提供できる会社は今やそこら中にあります。
たとえば、イギリスの「ダイソン」という掃除機メーカーがあります。今では誰もが知る掃除機「ダイソン」ですが、1998年に日本に進出したときの認知率はほとんどゼロ。しかしながら、2004年日本向けの小型軽量商品を発売した際、コマーシャルの最後で「ダイソン。吸引力の変わらない、ただひとつの掃除機」。とナレーションで締めくくったところ、爆発的に売れるようになります。
当時の掃除機のCMといえば、可愛い奥さんが出てきて使いやすさをアピールする内容が定番でしたが、このダイソンのコマーシャルでは、掃除をする姿など一切出てきません。新商品の画像と機能を説明するだけで、最後は、皆が気にもかけていなかった「吸引力」という言葉で締めくくられ、女性のこころをつかんだわけです。
「独創的で先端的なイメージ」「高級、高性能、憧れ」「CMが印象的」「技術力がある」「独特の形の掃除機や扇風機など、一目見てこのブランドだとわかる特徴的なデザイン」「すごい吸引力の掃除機のイメージ」「独自品質で高性能なブランド」「未来型の家電」「個性的な商品を開発する会社」「死ぬほど吸い込む掃除機」「斬新なデザイン」といった声が帰ってきました。
こちらも同じように10人の女性に質問したのですが、ほとんどの女性が「何もイメージが浮かばない」という回答でした。私も全く同じで、「まあパナソニックだから平均以上かな」くらいのイメージしか浮かびません。
つまり、消費者を動かす力は、「モノ」から「ブランド」へと大きくシフトしており、お客様から選ばれるためには、モノづくり志向からブランド作り志向へと発想を転換しなければなりません。そしてモノを超えた心に響く価値を創造することが重要になってきました。