体験消費時代のマーケティングヒント
みなさんこんにちは。和田康彦です。
早速ですが、「フェムテック」ということばを聞いたことがありますか。
「フェムテック」とは、女性を意味する「female」とテクノロジー「techology」を掛け合わせた造語です。女性特有の月経や妊娠などの悩みに技術を使って応えるサービスで、QOL=生活の質を上げるためのサポートをしようという発想から生まれました。
2000年頃からフェムテックに取り組む企業が出てきましたが、実際に言葉が使われだしたのは2016年頃といわれています。きっかけは、デンマーク出身の女性起業家が、自身が開発した生理日予測アプリへの投資を募るために「フェムテック」ということばを積極的に使い始めたことです。
フェムテックがサポートする分野としては、生理に関すること、妊娠・出産に関すること、性生活に関すること、更年期に関すること、乳がんや卵巣がんなど女性特有の病気の早期発見に関することがありますが、女性の社会進出や晩婚化、未婚女性の増加を背景に、フェムテックに対するニーズが顕在化しています。そしてテクノロジーの進化が新しいサービスや製品開発を牽引しています。
フェムテックといわれるサービスや製品を開発しているのは主にベンチャー企業です。2000年代に入り、生理用品を使わずに済む下着や母乳を搾ってためるウエアラブル機器などを手掛ける企業が相次ぎ登場。現在は世界で数百社が関連サービスを手掛けるとされています。
日本におけるフェムテックの先駆けは、エムティーアイの女性向けアプリ「ルナルナ」です。月経日や基礎体温を記録することで妊娠しやすい時期などが分かるのが特長で、00年にサービスを開始した後、累計インストール数は1400万を突破。国内で最も広く使われているヘルスケアサービスの一つです。
フェムテック市場には、大手メーカーも注目しています。コニカミノルタは2月、女性向けの健康支援機器「モニシア」を開発し、クラウドファンディングによる支援者約550人に先行提供しました。パジャマのズボンなどにセンサーを装着し、睡眠中の腹部の温度を計測。月経周期を予測します。月経前症候群(PMS)と呼ばれる、月経前の数日間に起こりやすいイライラや体のむくみなどの不調に寄り添う機器です。日々の体調を記録するスマホアプリと合わせて、月経前後の体調変化を女性自身が把握。仕事や家事の量を調整したり気持ちが落ち込むのを避けたりしやすくなることに役立つことを目指しています。
また、欧米では16年以降、月経周期を管理したり避妊を目的としたりするウエアラブル機器やアプリが、医療機器としての承認を得た上で発売されています。米グーグルが買収する米フィットビットも、18年に同社の腕時計型端末に月経周期管理機能を追加しています。米アップルもフェムテックへの取り組みをスタート。昨年9月、腕時計型端末アップルウオッチに月経周期の管理機能を追加。11月には米国立衛生研究所(NIH)やハーバード大学とこの機能を用いた医学研究を始めました。月経周期のデータをアップルウオッチで大規模に集め、月経と不妊症など女性特有の疾患の関係を調べる計画です。
日本の小売業界もこうした商機に注目しだしました。大丸松坂屋百貨店は昨年11月、大丸梅田店にフェムテック関連商品を集めた売り場「michikake(ミチカケ)」をオープン。女性の悩みに寄り添う売り場づくりに取り組んでいます。
日本人女性2000人を対象にした日本医療政策機構(東京・千代田)の調査によると、PMSなど月経に伴う症状で仕事の効率が半分以下に落ちると答えた女性は45%にのぼります。女性の約半数がPMSの症状を感じていながら、そのうち63%が何も対処していないと回答。こうした課題を解消できれば、働きやすさが向上します。
女性は男性と比べ、ヘルスケア商品の購買意欲が高いとされ、フェムテック市場は今後右肩上がりが続きそうです。「フェムテック」によって、一人ひとりの女性が自分らしく働たり、生活できるようになれば、日本の未来はもっと明るく元気になっていくのではないでしょうか。