体験消費時代のマーケティングヒント
みなさんこんにちは。和田康彦です。
東日本大震災から丸9年が経ちました。当時を振り返ると、宅急便1個につき10円を寄付する活動で多くの共感を集めた運送会社、時短や節水、節電にも役立つすすぎが1回でOKの洗濯用洗剤の発売、収穫や育てる楽しみに加えて節電にもつながったグリーンカーテン、「上を向いて歩こう」「見上げてごらん夜の星を」という曲をワンフレーズずつリレーしたCMなど、本来の機能や役割に加えて、社会や未来のために役立つ価値を提供する商品やサービス、企業メッセージに注目が集まりました。
それまであまり顕在化していなかった社会貢献意識や利他心が芽生え、商品やサービスを選ぶ基準として「社会的価値」を重視する消費者が増えていくきっかけになったのが東日本大震災です。
機能性やデザイン、価格やお得感、ブランドや知名度といった従来からの選択基準をベースにしながらも、「省エネ」や「環境保持」「安心・安全」「困った人を応援する」といった社会価値を重視するエシカルな消費スタイルは年々浸透してきています。
それに伴って、企業の「理念」や「SDGsへ取り組み」「社会課題の解決」などに共感できるかどうかということが、消費者が商品やサービスを選ぶ基準のひとつになってきました。
一方で、年々進化するスマートフォンやスマートスピーカーなど、新たな楽しさや発見・体験を提供する商品にも共感の連鎖が生まれ、新しい市場を創造しています。
例えば、アップルは、長期を見据えて私たちの生活がどんどん良くなり、楽しくなる製品やサービスを生み出して、企業と個人の幸せな関係を育んでいます。
また、アマゾンも日々サービスの質を向上させ、またプライム会員向けのサービス内容をこれでもかと充実させることで、アメリカでの会員数は1億5000万人以上と驚異的な規模に成長しています。
つまり、これからの時代は企業と消費者との長期的な絆づくりがますます重要になってきます。そして絆づくりの核になるのは、消費者の企業に対する「共感」です。企業理念に対する共感、商品やサービスの対する共感、社会貢献に対する共感など、企業はあらゆるステークホルダーと一緒になって共感の輪を広げていくことが繁栄の条件になります。
企業と消費者の相思相愛の関係づくりこそ、サスティナブルな企業経営の根幹をなすのです。